「イツワルセカイ。-Relight My Soul-」のクレアとエリシアのその後です。
百合描写と、イツセカ。本編のネタバレにお気を付けください。
大丈夫な方はスクロールしてお読みくださいませ。

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//ここまで

 

「世界一周、かぁ……いいなぁ」

――クレアの零した一言を、エリシアの耳は鋭くキャッチした。
テレビ画面には様々な国の景色が次々と浮かんで、切り替わっていく。どうやら旅番組のようで、クレアはナレーションを聴いているようだ。

「お嬢様、最近よくお外にお出かけされていますものね。この前は王都にも旅行に行きましたし」
「そう! それがね、とっても楽しかったの!」
「えぇ、それはそれははしゃいでおられましたものね。この国以外にも興味がお有りですか?」
「うん。まずはね、この国の土地を全部巡って――それから、別の国にも行くの。そうして、どんどん国を移動していって……」
「それは素晴らしい……!」
「エリィもそう思ってくれるの?」
「はい! エリィもぜひ、お嬢様のお供をさせて頂きたいです。行きましょう、世界一周!!」

クレアはきょとんとした顔つきになった。まさか、エリシアが本気で食いついて来るとは思わなかったのだろう。
しかし――このメイドの主人愛は加減を知らない。主人が望むのならどんなことでも叶えたいという情熱に満ちている。

「でも……きっとお金が沢山かかってしまうし……」
「そこはアルフィーネ様やベルタリウス様にお出し頂きましょう!」
「……いいのかなぁ。二人とも、クレアはとっても大好きなお友達だけど……そこまでして貰うのは……」
「いいのですよ、お嬢様。きっとOKを出して頂けます。何なら、今確認いたします。暫しお待ちを」

エリシアは手早くPDを起動し、グループチャットに今の会話について書き込んでみた。
二人からの返事は迅速で、五分も待たずに返信が来る。

アルフィーネ:世界一周、ですか……色々問題はあると思いますが、私は賛成します。女性二人の旅であることと、盲目のクレアが旅するのは危険かなと思うのですが、その辺りはまた考えましょう。
ベルタリウス:俺も特に反対する理由はない。資金についてはこちらが出そう。エドガーに話せば幾らでも金を送ってくれるだろうさ。

「お嬢様、お二人から許可を頂きましたよ!」
「えっ、は、早い……もう、エリィったらせっかちさんね?」
「えへへ、ごめんなさい。でもエリィ、嬉しいです。これからじっくりと旅の予定を練っていきましょうね!」
「有難う……エリィ。でもね、わたし少し残念なの。これから沢山の景色に出会えるのに、わたしの目は何にも映してくれないんだもの」
「それでしたら、エリィが余すところなくお嬢様に風景をお伝え致しましょう。語彙の限りに、克明に!」
「王都に行った時も、エリィはいっぱい喋ってくれたわね。今鳥が飛んだとか、綺麗な色のお花があるだとか……とっても、助かったわ」
「……お役に立てて、何よりです」

万感の思いで、エリィは言葉を吐き出した。

「ところで――ねぇエリィ、あのね。ラジオで知ったのだけれど、最近は女の子同士でも結婚が出来るのね」
「え!? あ、あぁ。法改正でそうなりましたね……それは勿論、存じておりますが……そ、それが?」

愛する主人と結婚出来たらどんなに良いだろう、と、エリシアも常日頃から思ってはいた。
けれど、それはけして叶わぬことなのだとも――。

「エリィ。わたし、エリィとずっと一緒にいたいわ。そのためだったら、結婚しても良いと思っているの。ダメかしら」
「……ほぇ」

思わず、間の抜けた声を出してしまう。

「わたし、やっぱりおかしなこと言ったかしら。エリィもクレアのこと、好きでしょう? クレアもエリィが好きよ。それに、女の子同士でもできるのならエリィとしたいわ」
「お嬢様……」
「……ダメ?」
「ダメな訳ないでしょうがーっ!!」

いよいよ気持ちが抑えきれなくなって、エリシアはクレアに思いきり抱きついた。

「わぷ。く、苦しいわ、エリィ」
「あ、ご、ごめんなさい……でもエリィ……とっても、とっても嬉しいのですよ……」
「……良かった」

そっと、エリシアの頬にクレアの華奢な指が触れた。

「頬が濡れているわ。泣いてるの?」
「はい……嬉しくて……」
「あらあら……エリィを泣かせてしまうなんて、クレアは悪い子ね」

くすくす、とクレアは無邪気に笑う。

「いっ、いいんです。私は、お嬢様に嬉し泣きをさせて頂けるのが何より尊いことだと思っております。愛しております……お嬢様」
「分かっているわ、エリィ。エリィはわたしが大好きってこと。わたしもね、おんなじぐらいエリィが大好きよ」
「はい……」

ぐす、と鼻を鳴らすエリィの頭を、クレアは優しく撫で回す。

「世界一周より、結婚式の方が先かしら。ね、エリィ。二人でウェディングドレスを着ましょ」
「は、はい……はいっ……!」
「ふふふ。また泣いているわ。あのねエリィ。エリィと世界中を旅してね、もしとっても気に行ったところがあったら、そこに住みたいって気持ちもあるの」
「わぁお。それも良いですね……!」
「このお屋敷を手放しちゃうのは心苦しいけれど……エリィと、より素敵な場所に辿り着きたいの」
「……はい。お嬢様が落ち着ける場所を、探しましょう。これから、ゆっくり……」
「有難う。あのね、今、ワクワクって気持ちだけで、不安なんて一つもないの。エリィと一緒なら……なんにも、少しも、怖くなんてないもの」
「恐縮です、お嬢様……」
「ずっと一緒に居てね。大好きなエリィ」
「っ……はいっ! もう離しませんよっ、お嬢様――!」

――その後暫くして二人は挙式を上げ、それからハーベルリークを旅立った。
彼女たちの住んでいた屋敷は、のちにリセエンヌ=ダーヴィトという少女に引き取られ、「深緋館(こきひかん)」という名が付けられるのだが――それはまた、別のお話。

 

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