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もしものしあわせ:大家族編

ヤサセカ。R後のIfです。

//ヤサセカ。R並びにイツセカ。のネタバレも多少含みますので下げます。

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――光の庭を、転げるように笑いながら駆け回る幼子たちがいた。
母親譲りの栗色の髪の少年と、彼そっくりの顔の黒髪の少年がきゃらきゃら笑いながらじゃれ合うように木に登っていく。
その様子を、これまた彼らそっくりの栗色の髪の少女が心配そうに見守り――その後ろに、彼らと少しばかり外れた容姿の黒髪の少女がしがみついていた。

「随分子どもが増えたわねぇ。しかも、最初は三つ子でしょう? クレスに、ベルタリウス、アルフィーネ。次に、クレア。毎日賑やかで仕方ないでしょ」
風に揺れる長い黒髪を抑えながら、シェフィリアが隣に座る男に尋ねた。
優しくもどこか胡散臭い頬笑みを湛えた壮年の男性は、深く頷く。
「出費がかさみますよ。特にベルタリウスはやんちゃでね、あらゆる場所を破壊するから」
「やんちゃとかいう問題なの、それ。っていうか破壊って何」
「クレスは実験薬で机を溶かしますし」
「やんちゃとかいうレベルではないわね。で、長女のアルフィーネが苦労してるってわけ?」
「そうですね。彼女はとても常識人のようだ。クレアもアルフィーネをとてもよく慕っているみたいですよ」
「そうねぇ。お姉ちゃんにべったり、って感じだもの。遠くでエリシアが歯噛みしているわ」
「一緒に遊べばいいんですけどねぇ。どうにも、プライドというものが邪魔をするそうですよ」
「ちっちゃいのにそんな難儀なものを習得しているってわけ。おませさんですこと」
「そして、更にその背後でフォルカーとエルくんが見守っている、と」
「パパが心配性なのはどこも同じね。貴方だって、今もしぃくんを父親みたいな目で見てるわよ」
「いやぁ。だって彼はいつまでたっても若いでしょう。随分大きくなりましたけど、それでもずっと僕の従者であることは変わりないですし」
「まぁね。……あれから十五年前、かぁ。遅いようで、早いもんね」
「そうですね」
男性――アルフォンスは瞼を閉じた。
恐らくは様々な出来事を思い起こしているのだろう、とシェフィリアは推察する。
色々なことがあった――本当に、色々。
皮肉屋の青年の死からも、ずっと色んな出来事が絶えず降り注ぐ毎日だった。
そして、その中心にはいつも――。
「みんな~パンケーキが焼けたわよー!」
――今はもう立派な女性となった、リーゼロッテもいた。
「パンケーキだと?」
「そんな食い物は」
「「もう食べ飽きたんだよ!」」
双子のような少年が声を揃えて叫ぶ。
「そんなこと言わないでよぉ! お母さん泣いちゃう~」
「く、クレスくん。ベルタリウスも……そんなこと言わないでくださいよ……」
「そーだそーだ! お母さんを泣かせちゃ、めっ!」
女性陣の抗議に、木の上の少年二人は若干ひるんだ。
「仕方ないな……」
「食べに行ってやる」
「「本当に仕方なくな」」
「よくハモるわね、あの男子二人……。髪の色が同じだったら、ホントにどっちがどっちやらよ……」
シェフィリアのぼやきに、アルフォンスは「そうですね」と苦笑する。
「昔の僕がこの光景を見たら、どう思うだろう」
涼やかな初夏の風が吹くと同時に、アルフォンスがつと呟く。
「昔は子どもを持つなんて、想像もできなかった。もし出来たとして、虐待して殺してしまうんだって、ずっと思っていた……」
「できないわよ、貴方には」
即答した声に救われるように、灰色の瞳が細まった。
「――はい。できません、絶対に。今はひたすら守りたい。僕が死ぬまで……あの子たちを、ずっと」
少し強くなった風に攫われることも無い、凛とした声だった。
「アルー! パンケーキ食べましょ!」
遠くでリーゼロッテが、少し声を張り上げて彼の名を呼ぶ。少女のように、無邪気に。
アルフォンスは、いっとう愛し気に目を細めてから、彼女に向けて手を振った。
「今行くよ!」
彼もまた、声を張り上げた――少年時代よりもずっとずっと大きな声で、溌剌と。

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