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ホロセカ。0.5的な何か

ファンティアにて先行して公開していたリクエストSSをこちらでも公開させて頂きます。
葉っぱさんよりリクエスト頂きました「クリアを引き取る前のアルフィーネさんとベルタリウスの会話」です。

※イツセカ。のネタバレを全面的に含みますので閲覧の際はご注意ください。下げておきますので大丈夫な方のみスクロールをお願いします※

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――これは、俺がクリアを引き取る一ヵ月ほど前の話である。

「これ、全部読んでくださいね」

と、徳高きアルフィーネ先生が持ってきたのは山のような育児書だった。

「くッ……どいつもこいつも俺をパパにしようとしやがって……やだぁーっ! 助けてパパーッ!!」
「うるせぇ、お前がパパになるんだよ! ……って何やらすんですか」
「勝手に乗ってきたのはそっちじゃねえかよ」
「えーと、それはいいとして。とりあえず育児書は徹底的に読んでくださいね。私がお勧めする本ばかりです」
「や、やだぁ……パパになんてなりたくないよぉっ……」
「いつまでそんな風に言ってるんですか。良いですか? ライとマシロはまだ学生で、私は≪聖女憑きの呪い≫があるんです。よって、消去法的に貴方にしかあの子――クリアを預けることはできません」
「エドガーに育てて貰おうよぉ……」
「私だってそうしたいところですが、エドガーさんだって娘さん一人でてんてこ舞いみたいですし……迷惑をかけられないでしょう?」
「俺が幼子を育てる方が余程世間に迷惑がかかると思う。史上稀なる人格破綻者に育ってしまうぞ」
「まぁ……否定はしませんけど……」
「しないのかよ。ひでぇなオネエチャン」
「で、でも! これはある意味良い機会です――貴方はもっと真っ当に、人への愛情というものを持つべきです」
「たぶん、持ってるよ。俺、ユリアが好きだった」
「それは…………私もですけど」

しかし彼女はクレスという名の呪縛を解き、他の人間と寄り添う道を選んだ。
我々とはもう、住む世界が違う。

「俺さ……ユリアの婚約の話を聞いた時から、ショックで夜しか寝れないんだよ……」
「ベタなギャグで誤魔化そうとしない。話を戻しますよ? 貴方はクリアに、たっぷり愛情を注いで育ててあげる必要があります」
「たっぷりのべる汁を注いで、か……」
「なんですかそのオゾマシイ液体は」
「血とか汗とか涙とかピーッとか……」
「いつまでもふざけてないで、現実と向き合いなさい」
「現実って、向き合って頭突きかましたら死ぬ?」
「い い 加 減 に し ろ」

怒られた俺は、その場に正座するようにと命じられた。
そして、延々と、長々と、アルフィーネ先生による子育て論を聞かされた。

「――と、私は思っています。ちゃんと聞いていましたね?」
「馬に念仏という言葉を知っているだろうか」
「終いにゃ監禁して一日中育児論を説き続けますよ」
「あーはいはい、聞いてた聞いてた」
「二回同じ言葉を言う奴は大概聞いてないんですよねぇ……」
「今からでも思い直せ、アルフィーネ。俺は虐待なんて真似をしたくないんだ」
「虐待って……」
「昔大人たちにされたことを全部仕返しちゃったら、どうするんだ?」
「……それを気にしている時点で、やらないと思っています」
「わかんねーぞ? ムカついたら殴るかも知んないぞ?」
「貴方は怒りで暴力は奮わないタイプでしょう」
「じゃあ、愉悦として殴ったら?」
「貴方は愉悦で子どもを傷つけたりする人ではありません」

きっぱりと断じられ、思わずまじまじとアルフィーネを見つめてしまう。
赤い宝石のような瞳が、やけに澄んで俺の顔を映し出していた。

「――怖いんですか?」

そう、問われた。
だから、当然こう答えた。

「怖いよ、そりゃ。相手は生きてるんだぜ。そして、意思を持ってる」
「……そうですか。そうですよね。私だって、ライを引き取った時に怖かったから」

でも、と前置きしてから、アルフィーネは俺の手を両手で包み込んだ。

「大丈夫ですよ。最初は上手くやれなくても、子どもと同じ目線で真摯に向き合っていれば、きっとクリアも応えてくれるはず」
「……どうだかねぇ」
「貴方の方から、逃げてはダメです。きちんと向き合ってあげてください」
「……………………わかったよ」
「はい、素直で宜しい」

なぜか、ナデナデと頭を撫でられた。パパにする態度かそれは。お前をママにしてやろうか。

「はー……この育児書の山、全部読むのか……そして覚えるのか……」
「えぇ。きっと、クリアと向き合う時にも役に立ってくれることでしょう」
「だといいんだがな……しかしこのクリアとかいうの、写真を見ると見事にクレスとユリアの子だな」
「……メルツァーがやらかしたんでしょうね。丁度、我々があいつを倒す一年前に孤児院に預けられていますから……」
「この顔を、眺め続けていられる自信がない」
「……それでも、貴方が引き取るほかないんです。レイチェリカ教団の運営する孤児院は、どこかきな臭い――普段は教団に囚われの身である私がそう感じていますので、あまり長居はさせたくないんです」
「なるほどねぇ……。……頑張るか」
「はい。頑張ってください、パパ。頑張れば『パパだいすき』とか言って貰えるようになりますよ」
「いや、非行に走らせるように努める」
「ベールーターリーウースー?」

ぎりぎりと、黒い笑顔で頬を抓られる。

「わひゃっひゃ。わひゃひゃひゃふぁ」(分かった。分かったから)
「良い子ですね~」

再び、ナデナデされる。

「……と、このように叱り、このように褒めろと?」
「いえ、抓るのはナシです。でも撫でるのはとても良いですよ。沢山なでなでして愛情を注いであげるんです」
「なでなで、ねぇ……」

試しに、手頃な位置にあった頭を撫で回してみる。

「おーよちよち。えらいでちゅね~可愛いでちゅね~」
「ちょ……っ」
「世界一キャワイイでちゅよ~アルファチャン~」
「……うっわ、腹立つなこいつ……」
「顔がまっかっかでちゅよ~お熱でちゅかね~?」
「――もうっ、冗談は程々にしてくださいっ! 私はもう帰りますから、ちゃんと育児書を読むんですよ!?」

手を振り払って、アルフィーネはぷんぷんと帰っていった。

「……はぁ」

俺は溜息をつき、ごろんとソファに寝転がった。
テーブルの上から気まぐれに一冊、育児書を手に取って開いてみる。

「貴方が親御さんにかけられて嬉しかった言葉を、お子さんにもかけてあげましょう」。

そう書いてあったけれども――。

「俺の親御さんって、一体誰のことを指すんだろうなぁ……」

――クレスのことを言っているなら、俺、あいつと話したことすらないんだけど。

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